No.224

”大学生達が出てくるシーンで急に思い出したんです。春から初夏の、暖かい夜……外を歩いてると、風がぬるくて過ごしやすくて。若かったから薄着で、Tシャツにショートパンツ、サンダル。背中にはリュック。荷物はいっぱい入ってるけど、身体は軽くて、どこにでも行けそうな自由の感覚……暖かい夜道を歩いてる。桜の萼が道にいっぱい落ちていて、雨上がりの草地の青い香りがする。月が出てて、まだ何ものでもない、夢や希望もなんだって描ける、軽やかな身体と魂……そんな頃もあったなって今急に思い出しました。今は何もかも重い…身体にも魂にも贅肉がついて。やり直しの効く年齢でもない。子供、家に土地、あまりにも重い、しがらみばかり。私はもはや自由ではない、どこにも行けない。でも絶望感と同時に、あの自由な感覚をどこまでも懐かしいと思う気持ちがあります。何もかもがただ懐かしい。
いつか死ぬ前にもこうして、いろんなことをただただ懐かしく感じるのでしょうか。つらかったこと、苦しかったことも……自分という人間が確かに生きていた証である、あらゆることを、授かった小さな黄金のねじ巻きを神様にお返しして、この意識が暗闇に吸い込まれていく前に。”

呟き